一生懸命

 毎朝、会う人がいる。

こちらは知っているけれど、

その人は私に見られていることに

気づいていない。

何故なら、その人は一生懸命歩いているから。

通勤のバスに乗るために一心不乱に

歩いているように見える。

その人の両足は「ハ」の字を模すように

内向きだ。

膝から下と足首が固まっていて、

一歩の歩幅が少ない。

バス停までの100メートルを両手を振って

懸命に進む。

雨の日も風の日もそして日照りの日も。

その人を見かけると少々のことでは

私も

弱音を吐かないぞと思える。